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July 18, 2004

Gouldner on Reciprocity

Alvin W. Gouldner 1960. "The Norm of Reciprocity: A Preliminary Statement "American Sociological Review. 25(2):161-178を読む。通勤時間に電車の中で読んでいて、短いのに1週間もかかりました。

書いている論文に役立つかも...と思って見直したんだけど、論文そのものにはあまり役に立ちませんでした。

でもおもしろかったポイントが二つ。


1.ComplimentarityとReciprocityは別物

Complimentarity1 はEgoのAlterに対する権利(x)がAlterのEgoに対する義務(-x)を意味する。
Complimentarity2はAlterのEgoに対する義務(-x)がEgoのAlterに対する権利(x)を意味する。
Complimentarity3はAlterのEgoに対する権利(x)がAlterのEgoに対する義務(-y)を意味する。
Complimentarity4はEgoのAlterに対する義務(-x)がEgoのAlterに対する権利(y)を意味する。

Complimentarity1と2が本来のcomplimentarityで、reciprocityというのはcomplimentarity3と4なんだけど、Parsonsはこの区別をしていない、という指摘でした。
片方の義務が片方の権利であるような場合がcomplimentarityで、両者がそれぞれ義務と権利をセットで持っているような場合がreciprocityということらしいです。

2. Reciprocityの規範は

1)役割に基づいた行為遂行を強化する、一種のバックアップ規範として作用する。
2)交換を可能にする。
3)社会システムの始まりの原因となる。

世の中、軍縮会議みたいに「そっちが先にやれ!」とならないのは、この規範があるからなんだそうです。たしかに、商品とお金を交換するときに、片方が相手のスキをついて自分だけ利することも可能かもしれない空白の一瞬があるけど、そうならないのは何も警察の存在とかだけじゃなくて、reciprocityの規範がその空白を信頼で担保しているから、と考えられそうです。働き始めるとき、初日にお給料出なくても次の日も出かけるのと同じだろうなあ。たんに契約があるから、だけではなくて、契約と規範がペアで効いているから、雇用主を信頼して働くんですよね、たぶん。給料日に「なんでこれだけ?」と思ったりするのはさておき(笑)。

ブログの、あるいはより一般的にはバーチャルな世界の経済もこれで説明できるかしら?市場を補完するもの、市場に二義的なものとしてreciprocityが考えられているけど、ブログって社会システムにおけるreciprocityの比重の大きさを端的にあらわしているんじゃないかしら?コメントとかTBつけてもらったらやっぱりお返ししたり、ときどきその方のブログ見にいったりしますよね。そしてephemeralな接触が安定したパタンに育つ場合もある、というGouldnerが行ったとおりのことが観察できるわけですし。

となると。社会システムは「市場か」「組織か」って二分もあったけど「市場中心か」「reciprocity中心か」の二分を立てて、その配合で眺めるってできるんじゃないかしら。そう考えると、social embeddednessがだいじ、なんていう最近の議論をGouldnerは予見していたようにもみえる。embeddednessていうと「システムの始まり」より「継続」に重点がありそうだけど、reciprocityていうと「始まり」と「非市場」を両立できそう。究極の市場にもどこかreciprocityが入り込んでいるように、究極のreciprocityのようにみえるブログの経済にも市場がミニマルな形で入り込んでいるのではないか...市場の市場外要素を組織やネットワーク以外で説明できるのがreciprocity概念なんじゃないか、そんなことを今日は考えました。

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Comments

おもしろそうな論文ですね。互酬性は、限定交換、一般交換、貨幣による売買という3タイプがあると思います。一般交換の場合だけが、非対称な関係になっていますが。

交換にみえないgive and giveの人は損しているようにみえて、じつは権力を握っている気がします。恩を着せるというか。関係が保たれるという条件はありますが。

しかしgive and giveも2タイプあって、いじめられていつもお金を巻き上げられるような人もいますね。この2つはどこで違うのかという気もします。前者は、名誉になること自発的にやるけど後者は強制されているとか。

脱線気味ですみませんです。
「市場の市場外要素」は「契約の非契約的要素」のデュルケム=パーソンズ的ですね。

Posted by: えむえむ | December 04, 2005 01:56 PM

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